日銀短観(にちぎんたんかん)は、正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といい、日本銀行が四半期ごと(年4回)に実施している統計調査です。日本の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としています。海外でも「TANKAN」の名称で広く知られています。
目的と特徴
- 金融政策の判断材料: 日本銀行が金融政策を決定する際の重要な判断材料の一つとされています。
- 景気の実態把握: 数値データだけでなく、企業経営者の景況感や先行き見通しといった「肌感覚」を調査している点が特徴です。これにより、景気の現状や先行きの変化をより速く、多角的に捉えることができます。
- 速報性: 高い回答率と、調査開始から約1ヶ月で公表される速報性も特徴です。
調査対象と項目
- 調査対象: 全国の約1万社(大企業、中堅企業、中小企業)を対象に、製造業と非製造業に分けて調査されます。資本金によって大企業(10億円以上)、中堅企業(1億円以上10億円未満)、中小企業(2千万円以上1億円未満)に分類されます。
- 主な調査項目:
- 業況判断: 現在の景況感や3ヶ月先の見通し(「良い」「さほど良くない」「悪い」の3択)
- 需給・在庫・価格判断: 製品需給、在庫水準、販売価格、仕入れ価格など
- 売上・収益計画: 売上高や経常利益の見通し
- 設備投資計画: 設備投資の実績や計画
- 雇用: 雇用人員の過不足判断や新卒者採用状況
- 企業金融: 資金繰り、金融機関の貸出態度、借入金利水準など
- 企業の物価見通し: 将来の販売価格や物価全般の見通し
これらの項目は、企業単体ベースで調査されます。
注目される指標
最も注目されるのは「業況判断DI(Diffusion Index)」です。これは、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値で算出されます。DIがプラスであれば景気が良いと判断され、マイナスであれば景気が悪いと判断されます。特に、大企業製造業のDIは景気の先行指標として重視される傾向があります。
発表時期
毎年、3月、6月、9月、12月に調査が実施され、それぞれ4月初旬、7月初旬、10月初旬、12月中旬に調査結果が公表されます。公表時刻は午前8時50分です。
活用される場面
日銀短観の結果は、日本銀行の金融政策決定会合における議論の材料となるだけでなく、政府の経済政策、企業の経営戦略、そして株式や為替などの金融市場において、今後の景気動向を判断するための重要な情報として広く利用されています。